昭和61年度

関西学院大学       社会学部

指導教授              田中國夫

 

大学生の音楽の嗜好に関する一研究

 

3353番           原 淳

 

受付61.12.20社会学部

 

目次

問題... 2

.      はじめに... 2

.      若者音楽の近代の流れ... 2

.      若者の音楽に対する態度... 3

.      本研究(調査)の目的... 4

方法... 5

.      予備調査... 5

.      質問紙及び尺度... 6

結果... 7

.      性差... 7

.      思考的外向性対思考的内向性の差... 9

.      ジャンルごとの差... 12

.      因子分析... 15

考察... 22

1.       性差... 22

2.       思考的外向性対思考的内向性の差... 22

3.       ジャンルごとの差... 23

要約... 26

参考文献... 27

終わりに... 27

 


 

問題

1.   はじめに

現代の情報量の増大にはめまぐるしいものがある。コンピュータや通信技術の発達および普及と共に、地球の裏側の情報も瞬時にして入手できる程の時代である。また情報産業といわれる第4次産業の発展と共に現代では膨大な情報の中からいかに必要な情報を選択するかという課題があらゆる分野で生じてきた。情報というテーマにもれない音楽産業も、ここ数年で一つの岐路たたされた様である。それまでの情報源であったレコードやコンサートも新しい波にのみこまれていったのである。近年における貸レコード屋の普及は、実際のレコード価格の10分の1で借りることができ、レコード会社は、そのあおりをうけて、不況に落ち込み、この問題は国会にまでもちだされる社会問題となった。またオーディオ技術の発展と共に、自らの部屋にいながらにして臨場感あふれる音楽を聴く事ができ、以前よりもライブ演奏を実際に聴きに行くと言う必要性が減ってきたのもたしかである。

この様な時代背景と共に人はどの様にして自らの嗜好する音楽というものを選択しているのであろうか。特に音楽と親しむ機会を多く有している学生においてはどうであろうか。NHK放送世論調査編の「現代人と音楽」(1982)は、1981年の秋に日本人の音楽への態度、行動を調査しているが、その中に興味深いことが報告されている。それは同じ15歳から24歳までの青年でも、学生と職業をもった青年では、音楽を「非常に好む」比率かがなり違うという指摘で、学生70%に対し、有職青年は52%となっている。この様に学生にとって音楽というものが、生活余暇の重要な一部をしめているというのはいうまでもないのである。では、若者は、どの様な時代の中で現代の音楽を聴いているのであろうか。

 

2.   若者音楽の近代の流れ

近年にわたる若者音楽に年代を区切るとどうなるのであろうか。音楽評論家である田川律は「日本のフォーク&ロック史」の中で次の様な5つの時代分類を記している。

初期は戦後から1965年にかけてであり、彼はこの時代を「胎動」と名づけ、「新鮮な情報に心を躍らせた60年代前半。進駐軍放送と輸入レコードのコピーが日本のフォークソングの源だった。」と記している。また1966年から69年にかけては「幸福な時代」と名づけ、この時代は安保闘争などの学生紛争が最もさかんな時代であり、その社会的背景と同じくして、彼はこの時代に関して「世界的に若者の反乱が起こった時代は、フォークが直接人々に語りかける幸福な“揺りかご”の時代でもあった。」と記している。

その後学生紛争も沈退してゆく70年代から73年にかけては「揺れる志」と名づけられ、彼は「社会性をもっていた60年代の後半のフォークに比べ、個人の心情や風景を歌った歌や、愛の歌が目立った。」と記している。

またいわゆる「四畳半フォーク」といわれるものが流行したのもこの時代である。

この時代までは若者の音楽においてフォークソングが主流をなしており、どちらかといえば、曲よりも詞の方に比重が高かった時代で、歌の中には、一種のメッセージを含んでいるものが多かったのではないだろうか。

その後、新しい音楽が誕生する時代をむかえる。1974年から75年にかけてではあるが、この時代は「変貌」の時代と名づけられ、ニューミュージックという新しい分野が誕生していったのである。この誕生に関して彼は「誰がいいだしたのか。いずれにせよ、変貌し続けるフォークソングにふさわしいネーミングだった。」と記している。この時代には、今でも若者の心をとらえている松任谷由実がデビューし、多くの音楽評論家から彼女が現在のニューミュージックを打ち立てたといわれている。そして1976年から現在に至るまでにおいて、若者音楽すなわちポピュラーミュージックの誕生後、新しい音楽分野が次々と誕生してゆき、それまでのジャンルでは区切ることのできない、分裂と結合をくりかえしてゆく多様化の時代をむかえるのである。この様な流れとともに現代の若者の音楽には次の要因があると思われる。まず一つに音楽のテーマについてであり、かつて60年代において歌われていた社会性のある歌はその影をひそめ、恋愛をテーマとした歌に主流をうばわれてしまったことである。二つめには、電子楽器、音響装置の発達と共にアコースティックなものからエレクトロニクス音楽への拡大がなされていったことである。

現代のコンサートにおいても、弾き語りといわれるものは、ほとんど大舞台にたてることがなくなってしまったのであるが、だからといって一概にアコースティックサウンドはなくなってしまったとはいえず、むしろクラシック音楽の再流行といった回帰現象も存在しているということを否定できない。

この様な時代の流れとともに現代ではどの様な音楽が受け入れられているのであろうか。

またどの様な態度を持って若者は音楽を聴いているのであろうか。

 

3.   若者の音楽に対する態度

このテーマについては「大学生の心理」(1983)において田中が興味深い考察を記している。まず一つに学生の音楽好きのホンネと題し、彼は「いまの青年は子供の時からテレビ、ラジオ、パソコン、ゲームウォッチ、ビデオ、ラジカセなどと、いわゆる自動応答機械になれ親しんで成人してゆきます。これは何でもないことのようですが、何事もボタン一つを自分の思うとおりに操作すれば願いがかなうという全能感を彼らに植え付けられているのです。こうした青年にとって大学という自由の空間はまさにうってつけであり、自分の周辺をこうした機器でかざりつけ、思うままに操作して、ゆったりと自分だけの世界にひたろうとするのです。なかでもそうした欲求にぴったりなのが音楽に関する機器ということではないのでしょうか。」と述べている

この「何事もボタン一つを自分の思うとおりに操作すれば願いがかなうという全能感」は彼によればミーイズムにむすびつくと述べられている。つまり平明にいえば、自分勝手主義というものであり「日本の大学生は学問とともに自我という自分の人格の“核”をつくることに専念せず、自分の周辺をいかに自分むきに楽しくそろえるかに心をいだくことのあらわれではないかと考えるのです。」と述べられている。つまり、音楽そのものを楽しむという要因の他に自らのイメージを形づくるための道具として、音楽をきくという要因が大きな位置をしめいているとは言えないだろうか。

 

4.   本研究(調査)の目的

現代の若者とりわけ大学生の音楽に対する傾向について述べてきた。本研究においては以上のことをふまえた上で、調査を行い事実はどうなのかを調べるのであるが、その具体的な目的は次のとおりである。

@     聴き手である大学生にとって自らが嗜好する音楽はどの様なイメージによって受けとられているのか。

A     また学生において自分の選択する音楽をどの様な動機によって受け入れているのか。

B     また、音楽の好き嫌いは個人のパーソナリティによっても影響されるが、それはどの様な点で相違がみられるのか。

以上の目的をもって調査を行った。

 


 

方法

1.   予備調査

本調査に入る前に、音楽を選択する動機の項目を収集する為、心理学を学ぶ学生20(男子10人女子10)に対して面接を行った。

平均面接時間は20分である。なお面接期間は昭和61102日から8日までで面接場所は、関西学院大学社会心理学研究館の実験室である。面接の主な質問内容は次の通りである。

     あなたが最近よく聴く音楽はどんな点が、よいと思われますか。

     あなたはその音楽の情報をどこから得ましたか。

     あなたの友人と比べてあなたはどの程度音楽に関心があると思いますか。1から1010点尺度で答えてください。10が高い方です。

     先ほど○点と答えた基準は何ですか。

     最後にあなたは好きな音楽を選択する時、どんな理由をもって選んでいますか。

 

以上の様な面接から21項目の選択動機が得られた。

 

<<選択動機の項目>>

1.   メロディーが美しい

2.   歌手が好きである

3.   歌手に歌唱力がある

4.   歌手のルックスがいい

5.   歌手に人気がある

6.   作曲者がいい

7.   作詞者がいい

8.   リズムがいい

9.   歌の第一印象がいい

10.            同じ歌を友達も知っている

11.            歌詞に共感できる

12.            その歌がムードづくりに役立つ

13.            その歌を聴いた回数が多い

14.            自分で歌いやすい

15.            歌が季節と合う

16.            その音楽のジャンルが好きである

17.            編曲(アレンジ)がいい

18.            その歌が流行している

19.            兄弟が同じ歌を知っている

20.            ヒット志向ではない

21.            他に聴くものがない

 

以上の項目において192021は項目として不適当であると思われるので、これらを除外し本調査においては残り18項目を採用した。

 

2.   質問紙及び尺度

a.      音楽に対するイメージ尺度

この尺度は日頃聴いている音楽全体を思い浮かべて、その音楽が36個の形容詞にどの程度あてはまるかをたずねた尺度である。なおこの尺度に用いられた形容詞は、谷洋子(1964)が、梅本の指導ものとに作成した項目を用いた。反応カテゴリーは「非常にあてはまる」から「全くあてはまらない」の5件法を用いた。

 

b.      音楽の選択動機に関する質問

予備調査からえられた18項目について被験者が、音楽を選ぶ時どの程度重要視するのかたずねるものである。反応カテゴリーは「あてはまる」から「あてはまらない」の7件法を用いた。

 

c.       思考的外向性尺度

音楽の嗜好にパーソナリティがどの様に影響するかを調べる為、思考的外向性尺度を用いた。この尺度は矢田部とギルフォード(1965)が作成したものを採用した。反応カテゴリーは「あてはまる」から「あてはまらない」の5件法を用いた。

 

d.      好きな音楽のジャンル記入項目

個人が日頃最もよく聴く音楽のジャンルを記入してもらう項目である。記入方法は、あらかじめ12(その他を含む)のジャンルを提示しておき、最もよく聴くジャンルの番号を○印で記入させるようにした。

また、二つ以上記入されても分類可能にする為、日頃聴いている音楽のアーティスト及び曲名を3つずつ記入してもらった。

 

上記4種類計64項目に@年齢A学部B性別を問うフェイスシートを加えた質問紙を180部作成した。

 

調査の実施

昭和611120日から127日の期間中に行った。

 

結果

1.   性差

@       イメージの性差

日頃聴いている音楽全体を思い浮かべて、そのイメージを書いてもらった36個の形容詞に関して、どの程度違いがあるのかを示すために、男女間においてのT検定の結果を示す

 

形容詞

平均値()

平均値()

標準偏差()

標準偏差()

T値

有意水準

偉大な

2.95

2.82

1.01

1.04

0.77

N.S.

大きい

3.16

3.03

1.03

0.91

0.86

N.S.

広々した

3.42

3.27

1.00

0.82

1.08

N.S.

明確な

3.37

3.20

0.87

0.86

1.23

N.S.

ち密な

3.01

2.78

1.11

1.02

1.42

N.S.

鋭い

3.42

3.07

1.03

1.13

2.09

P<.05

男性的な

3.03

2.90

0.91

0.89

0.90

N.S.

整った

3.55

3.40

0.85

0.88

1.05

N.S.

深い

3.56

3.52

1.04

0.89

0.29

N.S.

甘い

3.18

3.42

0.92

0.85

-1.71

N.S.

明るい

3.51

3.74

1.06

0.810

-1.57

N.S.

優しい

3.64

3.710

0.89

0.88

-0.38

N.S.

意味深長な

3.16

2.98

1.03

0.99

1.18

N.S.

厳しい

2.60

2.21

1.02

1.05

2.37

P<.05

気高い

2.85

2.81

1.06

1.09

0.24

N.S.

温和な

3.29

3.46

0.96

0.88

-1.19

N.S.

丸い

3.08

3.37

0.92

0.91

-2.00

P<.05

清らかな

3.45

3.36

0.99

0.90

0.62

N.S.

重い

2.90

2.50

0.97

0.92

2.75

P<.01

渋い

2.82

2.88

1.07

1.06

-0.39

N.S.

回りくどい

2.15

2.08

0.94

0.93

0.49

N.S.

もの悲しい

3.05

3.03

0.94

0.87

0.15

N.S.

女性的な

3.14

3.36

0.96

0.84

-1.57

N.S.

勇ましい

2.88

2.70

0.85

1.03

1.20

N.S.

陰気な

2.47

2.25

1.02

0.96

1.50

N.S.

硬い

2.41

2.16

0.99

1.01

1.60

N.S.

ごつごつした

2.10

1.81

1.12

0.96

1.75

N.S.

冷たい

2.37

2.00

1.01

1.02

2.31

P<.05

難しい

2.29

1.96

0.98

0.98

2.16

P<.05

こわい

1.76

1.65

0.86

0.77

0.90

N.S.

せっかちな

2.03

2.01

0.91

0.94

0.11

N.S.

奇妙な

2.27

2.38

1.06

1.10

-0.63

N.S.

乾いた

2.44

2.40

1.01

1.01

0.21

N.S.

薄い

2.22

2.18

0.91

0.86

0.28

N.S.

こっけいな

2.19

2.43

1.06

0.99

-1.46

N.S.

ゆがんだ

1.75

1.96

0.83

1.01

-1.37

N.S.

-1男女間のイメージに関するT-検定

 

-1に示すとおり、男女間においては、「鋭い」「厳しい」「丸い」「重い」「冷たい」「難しい」の6つの形容詞において有意差がみられた。なお「丸い」においては女子の平均値が男子よりも高いことをのぞいて残り5つの形容詞においては男子の平均値の方が高かった。

 

A       選択動機の性差

好きな音楽の選択動機に関して男女間にどの程度違いがあるのかを示すために男子と女子においてのT-検定の結果を示す

 

平均値()

平均値()

標準偏差()

標準偏差()

T値

有意水準

質問1

6.34

6.43

0.96

0.75

-0.64

N.S.

質問2

4.90

5.38

1.82

1.44

-1.82

N.S.

質問3

5.15

5.44

1.57

1.31

-1.24

N.S.

質問4

3.21

3.28

1.84

1.75

-0.24

N.S.

質問5

2.89

3.22

1.85

1.67

-1.21

N.S.

質問6

4.04

4.36

1.85

1.85

-1.08

N.S.

質問7

3.76

4.22

1.69

1.73

-1.70

N.S.

質問8

5.86

6.13

1.26

0.91

-1.54

N.S.

質問9

5.79

6.12

1.36

1.19

-1.66

N.S.

質問10

2.85

3.39

1.61

1.61

-2.08

P<.05

質問11

4.87

5.59

1.84

1.38

-2.62

P<.05

質問12

4.82

5.00

1.73

1.51

-0.72

N.S.

質問13

4.44

4.71

1.83

1.53

-1.0

N.S.

質問14

4.01

4.38

1.75

1.61

-1.38

N.S.

質問15

4.06

4.21

1.53

1.62

-0.62

N.S.

質問16

5.51

5.39

1.29

1.24

-0.57

N.S.

質問17

4.76

4.84

1.69

1.45

-0.33

N.S.

質問18

3.44

4.13

1.75

1.57

-2.65

P<.01

-2男女間の選択動機に関するT-検定

 

-2に示すとおり、男女間においては、質問10,11,18において有意差がみられた。

なお質問10は「同じ歌を友達も知っている」質問11は「歌詞に共感できる」質問18は「その歌が流行している」であり、平均値に関しては、この3つにおいて女子の方が高かった。

 

2.   思考的外向性対思考的内向性の差

思考的外向性と思考的内向性との相違により、音楽に対するイメージや選択動機にどの様な差がみられるかを以下に示す。

 

<<思考的外向性と思考的内向性の分類>>

質問紙Q3にしめした思考的外向性尺度において、個人の総得点を算出し中央値を求めた。

中央値=34.5

この数値をもって上位群と下位群に分け、上位群を思考的外向性、下位群を思考的内向性とした。

 

B       イメージの差

日頃聴いている音楽全体を思い浮かべて、そのイメージを書いてもらった36個の形容詞に関して、思考的外向性と思考的内向性との間においてT-検定の結果を示す。

 

 

形容詞

平均値()

平均値()

標準偏差()

標準偏差()

T値

有意水準

偉大な

2.89

2.86

1.06

1.00

0.15

N.S.

大きい

3.16

3.02

1.03

0.89

0.90

N.S.

広々した

3.33

3.35

0.99

0.82

-0.09

N.S.

明確な

3.35

3.21

0.94

0.79

1.00

N.S.

ち密な

3.05

2.72

1.11

1.00

2.01

P<.05

鋭い

3.51

2.95

1.09

1.04

3.33

P<.001

男性的な

3.10

2.81

0.90

0.88

2.02

P<.05

整った

3.49

3.44

0.94

0.79

0.36

N.S.

深い

3.68

3.40

1.05

0.85

1.90

N.S.

甘い

3.26

3.36

0.89

0.89

-0.71

N.S.

明るい

3.58

3.69

0.89

0.96

-0.76

N.S.

優しい

3.75

3.59

0.89

0.88

1.16

N.S.

意味深長な

3.28

2.84

1.02

0.96

2.87

P<.005

厳しい

3.62

2.16

1.14

0.92

2.82

P<.005

気高い

2.99

2.67

1.10

1.03

1.92

N.S.

温和な

3.42

3.35

0.97

0.87

0.51

N.S.

丸い

3.23

3.25

0.99

0.86

-0.08

P<.05

清らかな

3.41

3.40

0.99

0.89

0.08

N.S.

重い

2.85

2.50

1.03

0.87

2.32

P<.01

渋い

3.01

2.70

1.06

1.05

1.86

N.S.

回りくどい

2.12

2.10

0.94

0.93

0.17

N.S.

もの悲しい

3.16

2.93

0.93

0.86

1.67

N.S.

女性的な

3.31

3.21

0.90

0.90

0.70

N.S.

勇ましい

2.83

2.73

1.02

0.88

0.66

N.S.

陰気な

2.44

2.26

0.99

0.99

1.20

N.S.

硬い

2.33

2.21

1.06

0.96

0.78

N.S.

ごつごつした

1.90

1.98

1.06

1.04

-0.45

N.S.

冷たい

2.32

2.01

1.09

0.94

1.92

P<.05

難しい

2.20

2.01

1.05

0.92

1.19

P<.05

こわい

1.80

1.60

0.84

0.77

1.56

N.S.

せっかちな

2.02

2.01

0.94

0.92

0.08

N.S.

奇妙な

2.53

2.14

1.20

0.92

2.36

P<.05

乾いた

2.52

2.32

0.99

1.02

1.25

N.S.

薄い

2.21

2.19

0.93

0.82

0.18

N.S.

こっけいな

2.42

2.22

1.09

0.95

1.23

N.S.

ゆがんだ

2.02

1.70

1.11

0.70

2.21

P<.05

-3思考的外向−内向男女間のイメージに関するT-検定

 

-3に示すとおり、両者においては、「ち密な」「鋭い」「男性的な」「意味深長な」「厳しい」「重い」「奇妙な」「ゆがんだ」の8つの形容詞において有意差がみられた。なおすべての形容詞において思考的内向性の平均値の方が高かった。

 

C       選択動機の性差

好きな音楽の選択動機に関して思考的外向性と思考的内向性との間にどの程度違いがあるのかを示すために両者のT-検定の結果を示す

 

平均値()

平均値()

標準偏差()

標準偏差()

T値

有意水準

質問1

3.63

6.41

0.89

0.80

-0.37

N.S.

質問2

4.89

5.43

1.78

1.44

-2.14

P<.05

質問3

5.31

5.32

1.50

1.36

-0.05

N.S.

質問4

3.16

3.36

1.76

1.82

-0.70

N.S.

質問5

2.77

3.41

1.63

1.84

-235

P<.05

質問6

4316

4.23

2.05

1.65

-0.25

N.S.

質問7

3.86

4.14

1.86

1.60

-1.00

N.S.

質問8

5.94

6.10

1.16

1.01

-0.94

N.S.

質問9

5.81

6.15

1.42

1.07

-1.68

N.S.

質問10

2.86

3.46

1.60

1.61

-2.35

P<.05

質問11

5.33

5.19

1.53

1.71

-0.58

N.S.

質問12

4.83

5.04

1.63

1.57

-0.83

N.S.

質問13

4.51

4.70

1.75

1.59

-0.75

N.S.

質問14

4.05

4.43

1.69

1.67

-1.45

N.S.

質問15

3.88

4.43

1.53

1.58

-2.27

P<.05

質問16

5.30

5.58

1.31

1.22

-1.43

N.S.

質問17

4.96

4.63

1.65

1.43

-1.37

N.S.

質問18

3.53

4.14

1.69

1.66

-2.30

P<.05

-4思考的外交−内向間の選択動機に関するT-検定

 

-4に示すとおり、思考的外交―内向間においては、質問2,5,10,15,18において有意差がみられた。

なお質問2は「歌手が好きである」質問5は「歌手に人気がある」質問10は「同じ歌を友達も知っている」質問15は「歌が季節と合う」質問18は「その歌が流行している」であり、平均値に関しては、この5項目全て思考的外向群の方が高かった。


 

3.   ジャンルごとの差

個人が日頃最もよく聴くジャンルの相違により、音楽に対するイメージや選択動機にどの様な差がみられるかを以下に示す。

 

<<ジャンルの分類>>

質問紙Q4にしめした番号のとおりに分類したのであるが、二つ以上○印をした者が18名いた。この18名においては、質問紙のQ5に記入してもらった曲名とアーティスト名のジャンルをコーディングし、2つ以上同じジャンルがあればそれを採用して分類した。

 

ジャンル

人数

演歌

0

アイドル歌謡

33

ロック

12

フォーク

11

ニューミュージック

65

ジャズ

8

クラシック

18

歌謡曲

13

その他

2

-5ジャンル別人数

 

-5に示す様に162名をジャンル別に分類したのであるが、人数が少ないジャンル(15名以下)については分析が困難な為、ここではアイドル歌謡、クラシック、ニューミュージックの3つのみを変数として採用する。

 

D       アイドル歌謡とクラシックの選択動機の性差

アイドル歌謡とクラシックの両者では、選択動機にどのような差がみられるかを調べるために両者間においてT-検定を行ったのであるが、「歌手」に関する項目では、クラシックとの比較において不適当と思われるので、これは除外して考察を行う。

 

 

平均値()

平均値()

標準偏差()

標準偏差()

T値

有意水準

質問1

6.42

6.11

0.83

1.13

1.13

N.S.

質問2

5.33

4.06

1.34

2.01

2.42

P<.05

質問3

5.03

4.89

1.59

1.84

0.29

N.S.

質問4

3.48

3.22

1.99

1.67

0.48

N.S.

質問5

3.58

2.44

1.86

1.76

2.12

P<.05

質問6

3.88

5.17

2.06

1.72

-2.26

P<.05

質問7

3.64

4.22

1.77

1.70

-1.15

N.S.

質問8

6.33

5.39

0.78

1.04

3.68

P<.001

質問9

5.94

5.44

1.19

1.62

1.24

N.S.

質問10

3.21

2.50

1.65

1.54

1.50

N.S.

質問11

4.90

5.11

1.77

1.61

-0.40

N.S.

質問12

4.67

4.83

1.76

1.29

-0.35

N.S.

質問13

4.48

3.83

1.39

1.86

1.42

N.S.

質問14

3.96

3.83

1.64

1.82

0.27

N.S.

質問15

3.88

3.83

1.65

1.62

0.09

N.S.

質問16

5.87

5.55

0.99

1.10

1.07

N.S.

質問17

4.79

4.39

1.78

1.58

0.79

N.S.

質問18

3.70

2.50

1.78

1.30

2.50

P<.05

-6アイドル歌謡とクラシックの選択動機に関するT-検定

 

-6に示すとおり、アイドル歌謡とクラシックとの間において、質問2,5,6,8,18において有意差がみられた。

なお質問2は「歌手が好きである」質問5は「歌手に人気がある」質問6は「作曲者がいい」質問8は「リズムがいい」質問18は「その歌が流行している」であり、質問2,5,8,18においてはアイドル歌謡の平均値が、質問6においてはクラシックの平均値がそれぞれ高かった。

 

E       ニューミュージックとクラシックの選択動機の性差

ニューミュージックとクラシックの両者では、選択動機にどのような差がみられるかを調べるために両者間においてT-検定を行った。

 

 

平均値()

平均値()

標準偏差()

標準偏差()

T値

有意水準

質問1

6.45

6.11

0.75

1.13

1.21

N.S.

質問2

5.42

4.06

1.53

2.01

3.11

P<.005

質問3

5.67

4.89

1.11

1.84

1.72

N.S.

質問4

3.02

3.22

1.62

1.67

-0.48

N.S.

質問5

2.95

2.44

1.62

1.76

1.16

N.S.

質問6

4.23

5.17

1.77

1.72

-1.98

N.S.

質問7

4.29

4.22

1.67

1.70

0.17

N.S.

質問8

6.14

5.39

0.99

1.04

2.82

P<.01

質問9

6.17

5.44

1.11

1.62

1.79

N.S.

質問10

3.42

2.50

1.64

1.54

2.13

P<.05

質問11

5.59

5.11

1.46

1.61

1.22

N.S.

質問12

5.14

4.83

1.49

1.29

0.79

N.S.

質問13

4.78

3.83

1.55

1.86

2.20

P<.05

質問14

4.41

3.83

1.64

1.82

1.28

N.S.

質問15

4.31

3.83

1.36

1.62

1.26

N.S.

質問16

5.28

5.56

1.27

1.10

-0.83

N.S.

質問17

4.89

4.39

1.37

1.58

1.33

N.S.

質問18

4.05

2.50

1.34

1.30

4.36

P<.001

-7ニューミュージックとクラシックの選択動機に関するT-検定

 

-7に示すとおり、ニューミュージックとクラシックとの間において、質問2,8,10,13,18において有意差がみられた。

なお質問2は「歌手が好きである」質問8は「リズムがいい」質問10は「同じ歌を友達も知っている」質問13は「その歌を聴いた回数が多い」質問18は「その歌が流行している」であり、質問2,8,10,13,18全てにおいてニューミュージックの平均値の方がクラシックの平均値よりも高かった。

 


 

4.   因子分析

@     選択動機の因子分析

(ア)  アイドル歌謡

アイドル歌謡を最もよく聴く者の音楽を選択する動機の因子を抽出する為、バリマックス回転による因子分析を行った。

 

 

第1因子

第2因子

第3因子

第4因子

第5因子

質問1

0.04179

0.07325

0.72097

0.06945

0.11897

質問2

0.18941

0.15202

0.07224

-0.05913

046297

質問3

-0.00690

0.62544

0.42931

0.10701

-0.13984

質問4

-0.07815

0.04545

0.06563

0.20421

0.83117

質問5

0.77355

0.04570

0.12392

-0.12650

0.56115

質問6

0.18507

0.87963

-0.16352

0.14887

0.15772

質問7

-0.09773

0.30366

0.14235

0.18028

0.48203

質問8

0.71796

0.20304

-0.01915

0.37293

-0.08204

質問9

0.55890

0.29292

-0.00297

0.21329

-0.09894

質問10

0.59717

-0.12557

0.00406

0.24576

0.06697

質問11

-0.33241

0.34513

0.40705

0.35956

0.05515

質問12

0.33490

0.20891

0.20966

0.74848

0.13843

質問13

0.28799

0.06449

0.06923

0.13807

-0.06663

質問14

0.17410

0.14392

0.42483

0.61230

0.07374

質問15

0.28073

-0.02223

0.70621

0.38317

0.05442

質問16

0.02234

0.38562

-0.16856

-0.28045

-0.13234

質問17

0.12967

0.68921

0.13986

0.03929

0.06261

質問18

0.81378

0.01182

0.35439

-0.10285

0.04718

-8選択動機の因子分析

 

-8に示された5因子を項目別に分類してみると以下のようになる。

 

<第1因子>

5.歌手に人気がある

8.リズムがいい

9.歌の第一印象がいい

10.同じ歌を友達も知っている

18.その歌が流行している

 

<第2因子>

3.歌手に歌唱力がある

6.作曲者がいい

7.作詞者がいい

17.編曲(アレンジ)がいい

 

<第3因子>

1.メロディーがうつくしい

3.歌手に歌唱力がある

10.同じ歌を友達も知っている

14.自分で歌いやすい

15.歌が季節と合う

 

<第4因子>

12.その歌がムードづくりに役立つ

14.自分で歌いやすい

 

<第5因子>

2.歌手が好きである

4.歌手のルックスがいい

5.歌手に人気がある

7.作詞者がいい

-9

 

それぞれの因子に含まれる項目の内容を検討して因子名を付けた。

<Fact.1>流行・一時的動機

<Fact.2>歌の完成度

<Fact.3>季節感

<Fact.4>ムードづくり

<Fact.5>歌手のアイドル性

以上5因子に分かれた。

 

(イ)  ニューミュージック

ニューミュージックを最もよく聴く者の音楽を選択する動機の因子を抽出する為、バリマックス回転による因子分析を行った。

 

第1因子

第2因子

第3因子

第4因子

質問1

0.29382

-0.03616

0.16238

-0.09313

質問2

-0.16858

0.42654

0.21554

0.21854

質問3

-0.08201

0.12909

0.08445

0.11399

質問4

0.04164

0.13185

0.53085

-0.07748

質問5

0.37180

0.11917

0.83233

0.18432

質問6

-0.00616

0.86954

0.12815

-0.07223

質問7

0.02395

0.86865

0.01773

0.05277

質問8

0.78622

0.08207

-0.08796

-0.06167

質問9

0.57003

-0.03094

0.01328

0.13270

質問10

0.44833

0.22921

0.19560

0.49868

質問11

0.35631

0.24224

-0.41447

0.33836

質問12

-0.03722

-0.13551

0.21250

0.42317

質問13

0.52292

0.04721

0.14500

0.33629

質問14

0.16541

0.16704

-0.05535

0.48835

質問15

-0.01254

-0.13494

-0.11746

0.64382

質問16

0.25446

0.40353

-0.05129

0.03432

質問17

-0.14925

0.16523

-0.11796

0.10873

質問18

0.72314

-0.13824

0.33162

-0.00712

-10選択動機の因子分析

 

-10に示された4因子を項目別に分類してみると以下のようになる。

 

<第1因子>

8.リズムがいい

9.歌の第一印象がいい

10.同じ歌を友達も知っている

13.その歌を聴いた回数が多い

18.その歌が流行している

 

<第2因子>

2.歌手が好きである

6.作曲者がいい

7.作詞者がいい

15.歌が季節とあう

 

<第3因子>

4.歌手のルックスがいい

5.歌手に人気がある

11.歌詞に共感できる

 

<第4因子>

10.同じ歌を友達も知っている

12.その歌がムードづくりに役立つ

14.自分で歌いやすい

15.歌が季節と合う

-11

 

それぞれの因子に含まれる項目の内容を検討して因子名を付けた。

<Fact.1>流行・一時的動機

<Fact.2>シンガーソングライター

<Fact.3>季節感

<Fact.4>歌手のアイドル性

以上4因子に分かれた。

 

(ウ)  クラシック

クラシックを最もよく聴くと答えた者に関して同様の因子分析を行ったが、因子として不適当と思われる項目がある為、この分析は失敗に終わった。

 

3.被験者全てを含む因子分析

@     大学生が日頃聴いている音楽全体のイメージにおいて、因子を抽出する為に、36個の形容詞について答えてもらった被験者全てを含む因子分析(バリマックス回転による)を行った結果を以下に示す。

 

 

第1因子

第2因子

第3因子

第4因子

第5因子

質問1

0.08967

-0.20033

-0.00277

0.74472

0.29868

質問2

0.10920

-0.09011

-0.00143

0.79720

0.16585

質問3

0.11478

-0.09587

0.25067

0.58369

0.11692

質問4

0.02181

0.04402

-0.00348

0.08216

0.21417

質問5

0.05245

-0.04026

-0.03033

0.21285

0.49247

質問6

0.20484

0.19724

-0.15236

0.12315

0.52231

質問7

0.08415

0.22981

-0.13951

0.14562

0.17338

質問8

0.11383

-0.11114

0.29203

0.16322

0.19264

質問9

0.07285

-0.25657

0.10151

0.34310

0.54580

質問10

-0.06971

-0.02436

0.46786

0.03761

-0.08478

質問11

-0.22915

0.17633

0.34460

-0.01633

-0.23463

質問12

-0.32059

-0.01019

0.62650

-0.05544

0.11912

質問13

0.07570

0.00439

0.05925

0.07070

0.67724

質問14

0.39167

0.12363

-0.02844

0.29562

0.51034

質問15

0.09981

-020645

0.30673

0.47202

0.34715

質問16

0.01396

-0.01146

0.78580

0.12834

0.04008

質問17

-0.07337

-0.00850

0.81092

0.01263

-0.15947

質問18

-0.12350

-0.14677

0.64481

0.09913

0.12240

質問19

0.55127

0.04120

0.06339

0.32435

0.33758

質問20

0.37983

0.02407

0.09166

0.02234

0.34041

質問21

0.66763

0.14169

-0.03929

-0.00249

0.15286

質問22

0.20536

0.01241

0.13892

0.04578

0.08329

質問23

0.06431

-0.01731

0.40051

-0.06145

-0.03246

質問24

0.17066

0.30329

-0.08995

0.3411

0.02043

質問25

0.66037

0.18985

-0.06811

0.01964

0.15094

質問26

0.69425

0.14156

-0.14623

0.16196

0.00881

質問27

0.84450

0.10525

-0.12223

0.12952

-0.12990

質問28

0.62296

0.24791

-018463

-0.10136

016126

質問29

0.60986

0.14244

0.03849

0.18978

0.44803

質問30

0.35006

0.50065

-0.08619

0.26019

0.17778

質問31

0.14432

0.71944

0.02817

-0.13238

-0.02921

質問32

0.16848

0.74401

-0.03949

0.08694

0.00463

質問33

0.20278

0.57411

-0.20134

-0.23655

0.08412

質問34

0.08000

0.68944

-0.04158

-0.27486

-0.05714

質問35

-0.03588

0.75426

0.12159

-0.08587

-0.08649

質問36

0.27616

0.62286

-0.14736

-0.04304

0.07526

-13全被験者による形容詞の因子分析

 

-13に示された5因子を項目別に分類してみると以下のようになる。

 

<第1因子>

重い、回りくどい、陰気な、硬い、ごつごつした、冷たい、難しい

<第2因子>

こわい、せっかちな、奇妙な、乾いた、薄い、こっけいな、ゆがんだ

 

<第3因子>

甘い、優しい、気高い、温和な、丸い、女性的な

 

<第4因子>

偉大な、大きい、広々した、気高い

 

<第5因子>

ち密な、鋭い、深い、意味深長な、厳しい

 

以上5因子が抽出されたわけであるが、第1因子、第2因子に関する形容詞は、それぞれ平均値が3点以下のものであり、因子としては不適当な結果であった。

 

A     大学生の音楽に対する選択動機において因子を抽出する為に、選択動機18項目に関してバリマックス回転による因子分析を行った。

 

 

第1因子

第2因子

第3因子

質問1

0.02959

-0.03964

0.05258

質問2

0.07303

0.06335

0.48103

質問3

0.04760

0.09379

0.16613

質問4

0.10124

0.10214

0.65968

質問5

0.37936

0.06426

0.79968

質問6

0.03395

0.77143

0.10275

質問7

0.19554

0.92357

0.10998

質問8

0.21344

0.07078

0.04011

質問9

0.37292

0.03958

0.13105

質問10

0.61809

0.05484

0.21863

質問11

0.28723

0.22832

-0.21516

質問12

0.43210

0.08454

-0.04360

質問13

0.63614

0.07985

0.07085

質問14

0.64733

0.12523

0.04496

質問15

0.56793

0.04151

0.02539

質問16

0.03433

0.14954

-0.06885

質問17

0.06128

0.12172

0.00097

質問18

0.64433

-0.05792

0.29419

-14全被験者による形容詞の因子分析

 

-14に示された3因子を項目別に分類してみると以下のようになる。

 

<第1因子>

10.同じ歌を友達も知っている

12.その歌がムードづくりに役立つ

13.その歌を聴いた回数が多い

14.自分で歌いやすい

15.歌が季節に合う

18.その歌が流行している

 

<第2因子>

6.作曲者がいい

7.作詞者がいい

 

<第3因子>

2.歌手が好きである

4.歌手のルックスがいい

5.歌手に人気がある

 

それぞれの因子に含まれる項目の内容を検討して因子名を名付けた。

<Fact.1>ミーイズム

<Fact.2>作詞作曲者のよさ

<Fact.3>歌手のアイドル性

以上3因子に分かれた。


 

考察


1.
性差

@イメージの性差(T-検定)

-1に示すとおり、「鋭い」「厳しい」「丸い」「重い」「冷たい」「難しい」の各項目に関して有意差が生じた。なお「丸い」に関して女子の方が高い値を示しているもの以外は男子の方が高い値を示した。この結果から、男子の方が高い値を示した形容詞は、質実剛健の男性的な形容詞であるが、だからといって男子は男性的な音楽を好むと一概にはいえない。なぜなら、形容詞群の一つである「男性的な」「女性的な」では有意差がみられず、好きな音楽のイメージの点では性差はほとんどないといってもいいのではないだろうか。

 

A選択動機の性差(T-検定)

-2に示すとおり、「同じ歌を友達も知っている」「歌詞に共感できる」「その歌が流行している」の3項目において有意差がみられ、いずれの項目も、女子の方が高い値を示した。

この結果は近年の男女の違いを表している様に思われる。女子においては、男子よりも流行しているかどうかということは重要なことで「おしゃべり好きな」女子にとって、友達との話題というものもかかせないコミュニケーションの重要な一因なのではないだろうか。この点において興味深い報告を日本リクルートセンター(1980)の調査に見出せる。女子学生において「これからの社会になくてはならないもの」として「流行への敏感さ」をトップに選び、日頃関心のあることとして、過半数の者に選ばれた項目の中に「仲間や友人」「音楽」が含まれている。

また一般に音楽は男性よりも女性により多く好まれる。ということは音楽心理学でもいわれている。

「歌詞に共感できる」という項目に関してはNHK放送調査所(1983)の報告が参考になる。それによると女子の方が男子よりも鼻歌をよく歌う人が多く、またよく口ずさむ歌は15歳から29歳において、歌謡曲、フォーク、ニューミュージックであると報告されている。鼻歌と歌詞の両者には、口ずさむものと言葉であるものという関係にあるが、この点においても女子の方が歌詞に対する思い入れというものはないのだろうか。

 

2.思考的外向性対思考的内向性の差

@イメージの差

-3に示すとおり、「ち密な」「鋭い」「男性的な」「意味深長な」「厳しい」「重い」「奇妙な」「ゆがんだ」に有意差が生じた。

なおこれら全ての形容詞において思考的内向性の方が値は高かった。この結果においていずれの形容詞も、そのパーソナリティの特徴をあらわしていると思われる。つまり、思考的内向性の人は質問項目(Q3)を見てもわかるとおり、なににおいても深く考えることの傾向がある人であり、音楽におけるイメージにおいてもこのパーソナリティの影響を象徴している結果ではないだろうか。

 

A選択動機の差

-4に示すとおり、「歌手が好きである」「歌手に人気がある」「同じ歌を友達も知っている」「歌が季節と合う」「その歌が流行している」の5項目に有意差が生じた。いずれも、思考的外向性群の方が値は高かった。

これらの項目は、外的な意味をもつものが多いが、一番興味深い項目は、「同じ歌を友達も知っている」「その歌が流行している」というもので、やはり外向性の者がまわりの評価というものを意識しやすい為ではないだろうか。

 

3.ジャンルごとの差

ジャンルごとにおいてはアイドル歌謡対クラシック、ニューミュージック対クラシックのT-検定を行ったのであるが、有意差が生じた項目を見てみると当然の結果で、例えばクラシックにおいては「歌手」が存在しない場合が多いし「流行」ということについてもクラシックには、関係のないことであろう。


2.因子分析

ジャンルごとに選択動機において因子分析を行ったのであるが、クラシックにおいては不適当な結果が見出された。これは、クラシックを最もよく聴くと答えた者が、かならずしも他の音楽をあまり聴かないということにはならないことを意味しているのではないだろうか。なぜならQ4においてクラシックに○印をした者に、Q5においてロックやニューミュージックの名曲を記入した者が多々あったからである。これはジャンル分けの方法にも問題があるが、今後の分類法の発見を期待するのみである。

 

3.被験者全てを含む因子分析

@     大学生が日頃聴いている音楽全体のイメージにおいて、因子を抽出する為に、36個の形容詞について因子分析を行ったのであるが因子として不適当なものがあらわれ、結果は失敗に終わった。これは用いられた形容詞に問題があると思われる。例えば第一因子の負荷した形容詞は、意味の上では因子としておかしくはないが、これは「日頃聴いている音楽」ではないものとしてうけとられる。なぜなら、これらの形容詞の平均値は、ほとんど1点2点に集中しており、もちろん36個の形容詞全体の平均値を下回っているからである。

 

A     大学生の音楽に対する選択動機において因子を抽出する為に、選択動機の質問18項目に関して因子分析を行った結果、3因子が抽出された。それらの因子をそれぞれ、ミーイズム、作詞作曲者のよさ、歌手のアイドル性と命名したのであるが、以下にその考察をする。

第一因子に関しては、負荷した項目の中に「友達」「流行」という、まわりの評価を意味するものと「ムードづくり」「季節に合う」という、雰囲気づくりを意味するものがふくまれる。NHK放送世論調査所(1983)の報告においても、「若者と音楽の固い結びつきを補強し増幅していくのが、若者が「流行」ということに対している大きな関心である」と示されている。また若者の音楽好きには、地縁的な共同体が喪失した現代において、マスコミを場とした連帯意識の再構築への指向が見られ、それは大衆化社会の生活文化一般とも呼応するのではないだろうか。また「聴いた回数」や「歌いやすい」などにおいては、自分がよくその歌になじんでいるという親近感が、おのずとその歌を好きなものとさせていく効果があるのではないだろうか。

また「ムードづくり」や「季節に合う」などにおいては、まさしくフィーリング世代といわれる大学生の特徴をしめしている。つまり、音楽そのものの中に、その良さを求めるのでなく、音楽自体が自分の希求する雰囲気に、どれくらいあてはまるかという価値をそこにふくんでいる。以上6項目は、大学生の音楽を選ぶ動機としてふさわしいものであろう。ここにおいてミーイズムと名づけたのは、音楽そのものに関する深いものをもとめた項目ではなく、動機として自分という者にとってどれだけの利をもたらしてくれるかというものを意味しているものばかりだと思われたからである。例えば「同じ歌を友達も知っている」ということは、若者が仲間どうしのつきあいから疎外されないためには、今流行っている音楽をまめに聴いて、話題に乗り遅れないことが不可欠な条件であるからではないだろうか。

 

第二因子に関しては、「作詞者のよさ」「作曲者のよさ」の項目が負荷した。これは、妥当な結果と思われるがその考察を以下に示す。

若者がよく聴くのはニューミュージックが1番であるが、このジャンルにおいては、シンガーソングライターが多く、またこのジャンルのアーティストが他の分野であるアイドル歌謡や一般歌謡の作詞作曲をするというケースが多くみられる。また最近の傾向として、作詞作曲をする者がテレビのトーク番組や若者向けの雑誌に登場することが多く、それらのいわゆる文化人に関する情報も大学生にとっては、話題に乗り遅れないための不可欠な条件になりつつあるという意味もふくんではいないだろうか。

 

第三因子に関しては、「歌手が好き」「歌手のルックス」「歌手の人気」の項目が負荷した。この因子を歌手のアイドル性と名づけたのであるが、アイドル性というものはアイドル歌謡だけのものではないだろう。

この結果の考察を以下に示す。

現代においては、音楽は聴くものだけではなく、そこには観るという価値を含んでいる。NHK放送世論調査所の報告によると「4人に1人はテレビだけで音楽を聴いている」とある。またビデオの普及とともに、音楽もビジュアルな角度から売り出されることが多くなってきた。つまり、歌だけで売るのではなく歌手や演奏者そのものの魅力によりかかって売るのである。これはニューミュージックのアーティストにも言えることで、この分野においてもルックスというものは意識され、ステージングや服装においてもますますファッショナブルなものになっている。

つまり、見た目が悪いとだめなのである。

 


 

要約

本研究においては、若者とりわけ大学生が好む音楽をイメージと選択動機の角度から探るのが目的であった。説明変数として、男女差、思考的外向-内向、好きなジャンル別を用いて分析を行った。

結果は、予想していた程、明確な差や因子があらわれなかった。しかし全被験者による因子分析には、大学生の音楽に対する選択動機として興味深いものがえられた。大学生において音楽とは、そのもの自体が良いかどうかというよりも、音楽が自分の望むイメージにどれくらい合致するかとか、友人との話題の上で必要であるという動機で音楽を選択している様に思われる。これらは社会的な要因も多々あるが、音楽を産出する側であるマスコミ産業が、一時的なヒット志向を続けていることにも問題があるだろう。心に残る歌というものが少なくなってきた現在、若者にとって歌は何をしてくれるのだろうか。


 

参考文献

1.NHK放送世論調査所編、現代人と音楽

              日本放送出版協会,1982

2.岡堂哲雄編、心理検査学-心理アセスメントの基本-

              恒内出版,1975

3.関岣一・返田健編、大学生の心理-自立とモラトリアムの間にゆれる-

              有斐閣選書,1985

4.千石保、現代若者論-ポスト・モラトリアムへの模索-

              弘文堂,1982

5.田川律、日本のフォーク&ロック史-志はどこへ-

              音楽之友社,1982

6.梅本堯夫著、音楽心理学

              誠信書房,1966

7.吉田秀和他、人生読本 音楽

              河出書房新社,1980

 

終わりに

やっとの思いで卒業論文ができあがった。

この卒論は、私一人の力では、ここまで出来なかったと思う。いそがしいにもかかわらず急な頼みに嫌な顔せずひきうけてくれた3回生そして4回生のみんな。そして、質問紙を快く引き受けて下さった田中國夫先生。そして、ずぼらな私をはげまし御指導下さった谷川賀苗さんには本当に感謝しております。

有難うございました。

昭和61年12月20日